オーディブルは耳で読書を楽しめるという魅力的なサービスですが、そこには多くのデメリットが潜んでいます。
オーディブルには『頭に入り難い』という大きな問題点があります。これの解決は難しく、紙の本での読書を、そのままオーディブルに置き換えようと思うと失敗する可能性が高いです。
オーディブルは、『ながら聴き』が出来るというメリットを活かして、紙の本の再読や、繰り返しの学習に利用すると高い効果が期待できます。
この記事では、オーディブルのデメリットの実態と、メリットを活かす効果的な聴き方について解説いたします。
オーディブルには多くのメリットがあります。
読書から得た知識や感動は人生を豊かにし、仕事や勉強にも役立ちます。目を酷使しがちな現代においては、耳で読書を楽しめるというのも大きなメリットとなるでしょう。今の生活を変えずに、読書時間を増やせるとしたら、それは夢のようなツールです。もう紙の本なんて必要ないとすら思えます。
しかし、ちょっと待ってください。オーディブルは、本当にみなさんの期待に応えてくれるのでしょうか。
こんな声があります。
オーディブルのメリットに嘘はありません。ですが、聴いたものが頭に入らないとしたら、どれだけメリットがあっても、その価値の多くが損なわれます。
頭に入らないのは、向き不向きという問題もあり、慣れの問題もありますが、最大の要因は聴き方の問題でしょう。
オーディブルは夢のツールではありません。その魅力を引き出せる場面は限定的で、目で読む読書に置き換わるものではありません。
他にも、オーディオブックには多くのデメリットが潜んでいます。私自身、オーディブルを聴き始めた当初は思わぬ壁にぶつかり、「こんなはずじゃなかった……」と落胆した経験があります。
他にもあるでしょうが、やはり『頭に入らない』というデメリットが難点ではないでしょうか。これを克服しなければ、どれだけメリットがあっても無意味です。
それでも、わたしはもう1年半以上オーディブルを聴き続けています。
オーディブルは、全ての方の需要を満足させられるものではありません。ですが、その魅力を引き出す聴き方をすれば、とても有意義なツールとなります。
この記事では、『頭に入らない』理由を中心に、オーディブルのデメリットの実態と、私がそれでもオーディブルを手放さない理由を解説いたします。
オーディブルを愛用しているわたしとしては、大きな期待を抱いてオーディブルを始めた方が、がっかりして辞めていくのはとても残念なことです。みなさんの貴重な時間とお金を無駄にしないためにも、ぜひオーディブルの真実を知っていただきたいです。
オーディオブックが頭に入らないのはどうして?
オーディブルが頭に入らないというのは、始めた方の多くの方が実感するであろう事実だと考えています。
オーディブルが頭に入らないと感じる理由は、大きく分けて3つあります。
- 聴き逃してしまう
- 耳から情報を得るのが苦手、慣れていない
- 紙の本と比べて図表が少なく、見にくい
順番に詳しく説明していきます。
集中して聴いているつもりでも聴き逃している
オーディブルと言えば『ながら聴き』です。
通勤をしながら、家事をしながら、運動をしながら、車の運転をしながら、と多くのオーディブルを『ながら聴き』したくなる場面が思い浮かびますが、その時間が本当に適しているかは注意が必要です。
通勤中に聴いていて、例えば降りる駅を確認するときや、混雑したホームを歩くとき、空いている座席を探すとき、集中してオーディブルに耳を傾け続けられるでしょうか。
料理や掃除をしながらでも、車の運転でも、運動でも、そちらに注意を注がなければならない瞬間はあるでしょう。
それはわずかな時間かもしれませんが、いくつかの文章や単語を聴き逃してしまいます。
それが何度も繰り返されることによって、内容の理解度が下がるので、「頭に入ってこない」という結果となります。
さらに、集中していても聴き逃しは起こってしまいます。
読書をするとき、読むスピードは一定ではありません。
難しい部分はゆっくり読み、時には同じ文章を繰り返し確認することもあるでしょう。疑問が湧いたり想像が膨らんだりすれば、手を止めて考え込むこともあるでしょう。
本であれば読むペースをコントロールするのは自分です。本の内容や読書の環境に合わせて、読むスピードを自然と調整し、理解しながら読み進んでいます。
一方、オーディブルでは読書ペースは一定です。再生速度を変更できる機能はありますが、聴きながら、こまめに速度を変える人もいないでしょう。一定のペースでは、理解のために思考をめぐらせている間にもどんどん先に進んでいってしまい、その間の内容を聴き逃してしまいます。
聴き逃さないために考えることをやめれば、理解が出来ないまま進むことになりますので、やはり頭には入ってきません。
考えると聴き逃す、考えなければ理解できないという状態になり、どちらにせよ頭には残りません。
一時停止すればよいだけのことなのですが、ながら聴きをしているときに一時停止するのは面倒なものです。
聴覚情報の理解が苦手な人が多い
根本的な、向き不向きという問題もあります。
それは、認知特性という、情報を取得するのに得意な方法と不得意な方法があるのです。
人には、それぞれに認知特性に違いがあります。
認知特性とは、情報の入力や処理に関する個人の傾向を指します。これは、見る・聞く・読むといったインプット、理解や記憶、そして書いたり話したりするアウトプットまでのプロセスにおける個人差を表しています。
認知特性に関する研究によると、以下のようなタイプがあります。
- 視覚優位者 ⇒ 写真や図を扱うのが得意
- 言語優位者 ⇒ 文字を扱うのが得意
- 聴覚優位者 ⇒ 音を扱うのが得意
この中で、聴覚優位者は全体の1〜2割程度だと言われています。つまり、紙の本の文字や図表に比べると、オーディオブックの音の情報を処理することが苦手な人の方が多いのです。
加えて、オーディオブックというのが新しい体験であり、経験値が不足しているという問題もあります。特に読書家は本を読むことに慣れ親しみ熟練しているため、比較するとオーディブルが頭に入り難いと感じやすいでしょう。
逆に、本を読むことが苦手な人は、聴くのが得意な人かもしれませんので、オーディブルを試してみるのは良い試みでしょう。
視覚的な資料が少なく、あっても見にくい
オーディブルでは、作品によってPDFで図表が提供されますが、紙の本に掲載されている全ての図表が網羅されているわけではありません。作品によっては、ごく一部しか提供されないこともあります。
そして、ながら聴きをしながら、図表を確認するのは手間がかかります。
オーディブル自体が耳を使う媒体ですので、目で見る媒体との相性が良くありません。スマートフォンを手に持って聴いていれば問題ありませんが、『ながら聴き』というメリットを活かしていると、スマートフォンを手に持ち操作できる状況は少ないでしょう。
ナレーションの内容は、紙の本に書かれている文章そのままですので、オーディブルで提供されている図表の有無を教えてはくれません。「次の図をご覧ください」と語っていても、その図が提供されていないこともあります。どの図表をどの場面で見ればいいかがわかり辛いため、図表の確認を諦める方も多いでしょう。
紙の本では、視覚情報と言語情報の両方があるのに対して、オーディブルでは、ほとんど聴覚情報のみに頼る形になりますので、頭に入りにくくなります。
オーディブルに潜むデメリットの実態
オーディブルには、「頭に入らない」以外にも多くのデメリットがあります。
これらの実態を個人的な感想も交えて解説いたします。
読むよりも、聴く方が時間が掛かる
日本人の平均的な読書速度は、1分間に400~600字程度だと言われています。
目安としては、長編小説を5時間程度で読める速さになります。
一方でオーディブルでは、10時間程度かかる作品が多いので、比較すると、2倍程度多く時間がかかってしまうと考えることが出来ます。
私は読むのが遅いのですが、それでも1.5倍くらい時間がかかっている印象です。
これは全ての文字を追う前提での時間です。紙の本であれば要らないと感じたところを読み飛ばすこともありますから、読む本の種類によっては、差はもっと大きくなるでしょう。
オーディブルには速度調整機能が付いていて、数倍の速さで聴くこともできるのですが、速度を上げすぎてしまうと理解度は下がります。
初めて聴く小説や初めて学ぶ分野については、遅く感じる速さで聴くことを、強くお勧めします。
ピンポイントで読みたい箇所を探すのが難しい
オーディブルでは、紙の本をパラパラとめくる感覚で、聴きたい場所を探すということが出来ません。
クリップ機能(ブックマーク)はあるのですが、気になった所をすべてクリップするのは面倒ですし、数が多くなればその中から探すのも負担となります。
「3章の真ん中あたりに書かれていた」と思い出せれば探すこともできるのですが、「あれなんだったっけ?」という漠然とした疑問で振り返るとなると、探し出すのは難しくなります。
となると、確認せずに聴き進めることも多くなるでしょう。これも、内容の理解度を下げて、頭に入らない原因となり得ます。
作品数が少なく、読みたい本が見つからないことが多い
オーディブルの作品数は、聴き放題対象作品だけでも20万作品を超えています。(2024年6月時点)
そのうち日本語は2万作品と言われています。
それだけあれば十分だと感じられるかもしれませんが、公立図書館の平均蔵書数は12万冊といわれています。小学校の図書室でも平均1万冊程度です。全部読もうと思うと膨大な数ですが、その中から読みたい本を探すとなると、さほど多いとは言えません。
ちなみにAmazonの電子書籍kindleは700万作品以上です。
また、作品数はどんどん増えていますが、人気のある作品、新しい作品が中心となりますので、聴ける作品には偏りがあります。
新しい作品と、人気のある作家さんの作品を網羅的に埋めていってる印象で、そこから外れてしまうと全然入っていなかったりします。
聴き放題の対象外になっている作品があり、個別に購入すると高い
聴き放題対象外の作品の割合は、さほど多くありません。公表はされていませんが、日本語の作品では、およそ95%が聴き放題だと言われています。
しかし、名著と言われるような海外著者のビジネス書が対象外になっていて、がっかりした経験は何度もあります。
そして、どうしても聴きたいから個別に買おうと思うと、値段の高さに驚かされます。1冊3,000円以上の作品が多く、有料会員であれば3割引きになるのですが、それでも紙の本より高くなってしまいます。
新作はオーディブル化されるまで待たなくてはならない
注目作品が同時にオーディブル化されることもありますが、全体から見ればごくわずかです。新作は、紙の本が出版されてから数ヶ月後となることが多いです。
半年以上待つケースも珍しくありません。
オーディオブック化には、ナレーターのセッティングから、録音、編集と多くの工程が必要となるため、時間がかかるのはやむを得ないでしょう。人気が出たのですぐに配信とはいきません。
既存のシリーズ作品のオーディブル化が決まったとしても、一気に配信されるのではなく、1ヵ月以上の間隔を開けることが多いので、じれったいです。
ナレーターがイメージに合わないことがある
読んだことのある作品では『なんかイメージと違う』問題が発生しやすいです。
小説では、登場人物をナレーターが演じますので、イメージとの相違は避けられない問題です。
演じると言ってもドラマや映画と比べれば控えめですし、そもそも男性も女性も同じ人が演じ分ける媒体なので、慣れないうちは違和感があって当然です。私の場合は聴いているうちに気にならなくなるのですが、その前に嫌になる方もいるでしょう。
小説の場合、同じ作家さんの作品は、同じナレーターが務めることが多いです。そのため、一度合わないと感じてしまうと、その作家さんの作品はすべて聴けなくなります。
村上春樹さんや湊かなえさんの作品など、作品ごとに違う俳優さんがナレーターを務めている場合もあります。
小説以外であっても、好きな声、嫌いな声というのはありますので、作品には興味があるけど、このナレーターの声は聴きたくないということも起こりえます。
メリットもある!だからオーディブルを聴き続けている
かなりボロクソにデメリットを説明してきました。もうオーディブルの興味を失いかけている方もいるかもしれませんが、ちょっと待ってください。
これだけのデメリットを認識しているわたしが、それでもお金を払ってオーディブルを続けているのは、続けるだけのメリットがあるからです。
まず前提として、わたしは読書は暇つぶしやただの娯楽とは考えておらず、読んで知識を得る、身に付くことを期待しています。
そのために繰り返し読むことを重視していたのですが、就職、結婚、子育てと生活が変わっていく中で、読書の時間が取りにくくなりました。再読しながらでは、好きな作家さんの新作すら読む時間が取れずに、ストレスを感じていました。
そこで出会ったのがオーディブルです。オーディブルを再読のために使うことで、読みたい本を読む時間が確保できるようになりました。
ながら聴きで時間を有効活用できる
やはり、オーディブルの最大の魅力は『ながら聴き』です。
わたしの場合は通勤、掃除、入浴、ウォーキングの時間がオーディブル時間になっています。オーディブルが読書より時間がかかると言っても、他の事をしている時間に追加で足せるのですから、読める本の量は増えます。
ちょっと待て、『ながら聴き』では頭に入らないって言ったじゃないか、と思われましたね。頭に入らなかったら読んでも意味がないだろう、と。
この点、わたしはもう諦めています。
1度では頭に入りません。聴き逃しますし、理解度も低いし、すぐに忘れてしまいます。
でも、よくよく考えてみると、紙の本を読んだとしても、1度読んだくらいでは頭には入っていなかったんです。
では頭に入れるにはどうすればいいかというと、1度ではなく、何度も繰り返し読むことが重要なんです。
本でも読み、オーディブルも聴きます。繰り返しの中に、オーディブルをとり入れることで時短になります。
紙の本との置き換えを期待して始めたのですが、併用するものと考えるようになりました。
小説の場合は、基本的には本で読んだことのある作品を聴きます。
気になる新作をオーディブルから聴き始めることもありますが、その場合は、選定のために聴いていると考えていて、気に入ったら本を買って読みます。
ビジネス書や自己啓発本などの場合、新しい分野に挑戦するときは、最初の一冊は本を買って読むようにしています。いきなりオーディブルでは理解度がかなり低いです。
ある程度知識のある分野であれば、本を買わずにオーディブルで繰り返し聴くだけになることもあります。ただし、聴くだけでは忘れてしまうので、気になった点はノートにまとめています。
とにかく何度も読み返すことが重要だと考えていますので、『ながら聴き』で時間を有効活用できるオーデイブルは、手放せないツールとなっています。
聴覚を刺激して記憶の定着を強くする効果もある
オーディブルでの聴く読書は、聴覚を刺激することで、記憶の定着が強まる効果が期待できます。
読むだけではなく、聴くだけでもなく、両方することが効果的なんです。
また、不思議なもので、読んだときと聴いたときでは、気づける内容に違いがあります。読んでいたときに腑に落ちていなかった点が、聴いたことによって納得できるという経験はなんどもあります。
その逆もあって、オーディブルで聴いた作品を、あとから本で読んだ際に印象が変わることもあります。
特に小説ではこの違いが面白く、作品をより深く理解できている感覚があります。
理解を深めたい作品については、可能な限りオーディブルでも聴くようにしています。
まとめ
オーディブルには確かに多くのデメリットがあります。ですが、その魅力を引き出す使い方をすれば、非常に有意義なツールとなります。
特に、時間の有効活用や繰り返し学習の面で大きな価値があります。
重要なのは、オーディブルを紙の本の代替品としてではなく、補完的なツールとして活用することです。
紙の本とオーディブルを併用し、それぞれの長所を活かすことで、より効果的な学習や読書体験が可能になります。
また、聴覚からの情報入力に慣れることで、徐々に理解度や記憶の定着率が向上していく可能性もあります。自分に合った使い方を見つけ、継続的に活用することが重要です。
オーディブルは万能ではありませんが、適切に活用すれば、読書量の増加、時間の有効活用、そして学習効果の向上につながる強力なツールとなり得ます。デメリットを理解した上で、自分のライフスタイルに合わせて上手に取り入れることで、オーディブルの真価を発揮させることができるでしょう。
最後まで読んでいただきましてありがとうございました。
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