何年も勉強しているのに、なかなか資格試験に合格できない。
定期テストでは良い点が取れているのに、範囲の広い学力テストや模試ではあまり点が取れない。
こういうことってありませんか?
ある試験になかなか合格できず、何年も挑戦していた経験もあります。
試験が終わると気が緩み、参考書を眺めるだけの緩い勉強スタイルになる。
翌年の試験が近づくにつれて勉強量を増やすのですが、1年前と比べてあまり実力が付かないまま試験に挑み、また不合格になる。
トータルの勉強時間は長かったのですが、決して効率的ではありませんでした。
運転免許の学科試験や範囲の狭い定期テストであれば、直前の追い込み勉強が結果に結びつきやすいですが、学習範囲が広い長丁場の試験では、ただ勉強時間を増やすだけでは不十分です。
正確に、長く記憶するためのテクニックが重要になります。
とはいえ、勉強時間を増やすことも大切です。
しかし、仕事や学校、家事や子育てに追われる中では、まとまった勉強時間を確保するのは難しいものです。
そこで、すきま時間を利用して効率的に勉強する工夫が必要になります。
記憶を長期化させるためには、繰り返し、多感覚、再生の3つが重要です。
これらのテクニックを日常の学習に取り入れることで、効率的に知識を身につけることができます。
このページでは、記憶を長期化させるために重要なこと、その科学的根拠、そして実践方法について解説いたします。
1.効率的な記憶の仕組み~繰り返し・多感覚・再生
記憶を長期化させるために重要なのは、繰り返し、多感覚、再生です。
多くの感覚を使って覚え(インプット)、覚えたことを再生する(アウトプット)。
それを何度も繰り返すことが重要です。
学生時代、予習復習の重要性を説明されたことがあるかと思います。
予習して授業に臨み、授業では教師の説明を受け板書を取る。
家に帰って復習し、小テストを受ける、自習し、定期テストを迎える。
このサイクルは記憶を定着させる上で、完ぺきとは言えませんが、かなり効果的です。
違った方法でのインプットを繰り返した後、アウトプットの機会をしっかりとることで記憶は定着化します。
しかし、大学受験となると長丁場となり、範囲も膨大なので自習時間の比率が上がり、アウトプットがおろそかになりがちです。
社会に出てからの学習ではそれがより顕著となり、ほとんどアウトプットをしないまま、インプット(それも一つの方法で)を繰り返す方も多いかと思います。
インプット中心で、かつ本を読むだけといったような偏った学習法では、記憶の定着は弱くなってしまい、時間の経過とともにどんどん記憶は薄れていきます。
学習効果を高めるためには、意識的に効果的な記憶の仕組みを自分で取り入れる必要があるのです。
- 繰り返し覚える
インプットを繰り返すことで、情報は脳にしっかりと刻まれます。
これは特に、学習初期において効果的です。
繰り返し復習することで忘却率が低下し、記憶が定着しやすくなります。 - 多感覚学習
視覚や聴覚など、異なる感覚を使って学習することで、記憶の強度が増します。
例えば、テキストを読むだけでなく、オーディオブックを聴くことで、情報が視覚と聴覚の両方で符号化され、記憶の定着が促進されます。 - 再生学習
覚えた内容を思い出す行為が特に重要です。
学んだ情報をテストや他人への説明を通じて再生することが記憶の強化に繋がります。
例えば、学習内容を自分なりにまとめて人に教えることで、より深く理解し、記憶に残りやすくなります。
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記憶定着の科学的根拠~エビングハウス、二重符号化、再生効果
この章では、1章で紹介した勉強法の科学的根拠について詳しく解説します。
繰り返し学習の効果~エビングハウスの忘却曲線
繰り返し学習の有効性は、多くの研究で証明されています。
その一つに、エビングハウスの忘却曲線があります。
ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスの研究によれば、人間の記憶は初回学習後、急速に忘却が進みます。
しかし、繰り返し復習することで忘却率が低下し、記憶が定着しやすくなることが示されています。
一定の間隔を空けて繰り返し学習を行うことで、長期的な記憶保持が向上することもわかっています。
多感覚学習の効果~二重符号化で定着率アップ
多感覚学習とは、視覚や聴覚など複数の感覚を活用して学習する方法です。この方法は情報を深く理解し、記憶に定着させるための有力な方法とされています。
アラン・パイヴィオが提唱した二重符号化理論によれば、情報を視覚と聴覚の両方から取り入れると記憶の強度が増します。
この理論に基づき、テキストを読むだけでなくオーディオブックを聴くことで、情報が視覚と聴覚の両方で符号化され、記憶の定着が促進されます。
例えば、教科書を読む(視覚)とオーディオブックを聴く(聴覚)ことで、同じ情報が異なる感覚経路を通じて脳に送られ、記憶が強化されます。
さらに、視覚情報と聴覚情報を組み合わせることで、情報処理のスピードと理解度が向上するという研究結果もあります。
視覚と聴覚を同時に使用する学習方法は、視覚のみを使用する学習方法に比べて、記憶の保持力が高まります。
テストの成績も向上することが示されています。
繰り返し再生効果~アウトプットで記憶強化
アウトプットを重視した学習法は非常に重要です。
「再生効果(The Testing Effect)」に関する研究によると、学習内容をテストすることで記憶の定着が強化されることが示されています。
情報を単に再読するよりも、テストを通じて思い出すことで記憶力が強化されます。
具体的な実験では、学生が文章を読んだ後に、その内容を思い出して書くテストを繰り返し行ったグループが、ただ再読するだけのグループよりも、長期的な記憶保持が優れていることが確認されています。
また、人に説明する行為も効果的です。これを「ファインマンテクニック」と呼び、教えることで情報を自分の言葉で再構築し、より深い理解を得ることができます。
教えるためには自分がその情報をしっかりと理解していなければならないため、自然と情報の整理や再確認が行われます。
具体的な実践方法~効率的な学習法の取り入れ方
この章では、効率的な学習法の具体的な取り入れ方を説明します。
実践方法
繰り返す間隔について
学習内容を長期的に記憶に定着させるために、学習を短時間で複数回に分けることが効果的です。
人間の集中できる時間は短く、15分が限界とも言われています。
時間を効率的に使うには、自分が集中できる範囲で区切り、休憩をはさみながら行うことが重要です。
学習した内容は初回は24時間以内に復習を行い、その後は間隔を徐々に延ばしていくとよいでしょう。
Audible(オーディブル)の利用
多感覚学習の方法として、Audible(オーディブル)を利用することをお勧めしています。
オーディブルとはAmazonが提供しているオーディオブックサービスです。
聴く学習法は忙しい日常の中でも取り入れやすく、通勤時間や運動中、家事をしながらでもオーディオブックを聴くことで、学習時間に変えることができます。
オーディブルでは多くの学習用コンテンツが提供されており、特に語学学習やビジネス書、自己啓発書などの分野で効果を発揮します。
アウトプット方法
アウトプットの手段としてまず思い浮かぶのがテストでしょう。
自分で行う場合は、集中力を高められる環境を作ることと、記憶が曖昧だった箇所を確認することが肝心です。
他のアウトプット方法として効果的なのは、他人に説明することです。
他人に説明するためには、曖昧な記憶ではなく、筋道をきっちりと理解する必要がありますので、そのつもりでインプットを心掛け、自分の中でまとめ上げて説明することで記憶の定着を強化します。
その際は、質問も受け付けるようにすれば覚え漏れのチェックにもつながります。
簡単な思い出し行為も有効です
その日勉強したことを簡単にノートにまとめたり、口に出して振り返ることでも記憶の定着を助けます。
具体例(学生)
学生の方は、まずは授業の前後にしっかりと予習復習をすることが大切です。
繰り返し効果もあり、自習と授業では違った刺激を受けますので多感覚という点もクリアできます。
あとは週単位と月単位で学習内容の振り返りをしておき、定期テストを迎えればある程度記憶の定着化は計れるでしょう。
アウトプットの方法としては問題集を繰り返し解くほか、友人と説明しあうことが出来ればいいですね。
説明される側になった際にも、どんな質問をしてやろうかと考えながら聞けば違った刺激を得られて効果的です。
食事時などに家族に聞いてもらうのもいいですね。
学習範囲はどんどん増えていきますので、時間の管理は重要になります。
すべてをデスクで集中して行うというのはなかなか難しいかと思いますので、デスクで集中して行う学習と、すきま時間を利用して行う学習の内容を変える必要があります。
予習はデスクで集中して行うことを推奨します。
初めて学ぶ範囲については、しっかりと集中して行わないと記憶に歪みが生じ、その後の学習に影響が出る可能性があります。
問題集をする際も、初めて解く問題もデスクで集中したほうが良いでしょう。
すきま時間を使った学習では、多感覚学習と振り返りを行いましょう。
電車通学であれば、オーディブルなどを使って聴く学習を行うことで、すきま時間を使って繰り返し学習と多感覚学習の効果を得られます。
短い時間しか取れない場合は、新しい範囲に手を出すのではなく、間違えた問題を確認したり、その日の学習内容を思い出すなどの振り返り行為を行うことで効果を上げることができます。
具体例(社会人)
社会人になってからの資格試験等の勉強では、学習するための仕組みづくりが重要となります。
忙しい中で自分を律しながら、長期間学習を続けるのは、やる気だけでは難しいでしょう。
仕事の疲れに負けずに学習を続けるためには、習慣化が大きな助けになります。
朝の仕事に出かける前と、夜の寝る前、10分でいいのでデスクで学習する習慣を付けましょう。
学習を始める際はやる気に満ちているので、10分という時間が物足りなく感じますが、過大なノルマを課したせいでそれが達成できなくなっては習慣化に失敗します。
習慣が身についてから、徐々に学習時間を伸ばしていくようにしましょう。
それだけでは学習時間が足りませんので、通勤時間などのすきま時間を利用します。
通勤時間では、オーディブル等での聴く学習がおすすめです。
メールやSNS、ニュースサイトのチェックが必要な場合でも、これらはついつい長くなってしまいますので、聴く学習に充てる時間を先に取ったほうがよいでしょう。
オーディブルに教材がない場合は、自分で声に出して読んだものを録音し、あとで聴きなおすことで多くの間隔を使った学習となります。
このテクニックは仕事の資料を読み込む際にも使えます。
社会人になってからの学習で一番難しいのはアウトプットでしょう。
資格試験であれば問題集も出ているでしょうが、仕事で必要な学習についてはそういったものもありません。
家族や同僚に聞いてもらう、後輩に教えるつもりでマニュアルにまとめるなどの方法で、覚えた内容を整理してアウトプットすることで理解が深まるとともに記憶も定着します。
まとめ
資格試験に何年も挑戦しているのに合格できない理由の一つに、効率的な学習方法が身についていないことが挙げられます。特に範囲が広い試験では、単に勉強時間を増やすだけでは不十分です。この記事では、記憶を長期化させるための効果的なテクニックを紹介しました。
1. 効率的な記憶の仕組み
- 繰り返し: 短期間に何度も繰り返すことで記憶の定着を促進。
- 多感覚学習: 視覚や聴覚を使った学習法で記憶の強度を高める。
- 再生学習: テストや他人への説明を通じて覚えた内容をアウトプットすることで記憶を強化。
2. 科学的根拠
- エビングハウスの忘却曲線: 繰り返し学習が忘却を防ぎ、記憶の定着に効果的。
- 二重符号化理論: 視覚と聴覚を組み合わせることで記憶の保持力を高める。
- 再生効果: テストや説明を通じて記憶を強化する。
3. 具体的な実践方法
- 繰り返す間隔: 短時間で繰り返す学習が効果的。
- Audibleの利用: 多感覚学習を日常に取り入れ、すきま時間を有効活用。
- アウトプット方法: テストや他人への説明を通じて記憶を定着させる。
4. 学生・社会人向けの具体例
- 学生: 授業の予習復習を徹底し、週単位・月単位で振り返りを行う。
- 社会人: 朝晩の短い学習時間を習慣化し、通勤時間を聴く学習に利用。アウトプットは同僚や家族に説明するなど工夫する。
限られた時間を最大限に活用し、効率的に学習内容を記憶に定着させることが、試験合格への近道です。ぜひ、日常生活にこれらの方法を取り入れてみてください。
最後まで読んでいただきましてありがとうございました。
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