『方舟』読書記録~生き残るための残酷な決断

アイキャッチ画像『方舟』ヘッドフォンをしている女性
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このページは、夕木春央先生が書かれた、『方舟』という小説についての読書記録です。個人的な感想をネタバレありで書いていますので、ご注意ください。

2022年に出版された作品で、その衝撃の結末が話題となり、このミステリーがすごい他、多くのランキングで上位に選ばれました。

突如として発生した地震により地下施設「方舟」に閉じ込められてしまった9人。
脱出するためには、誰か一人が犠牲にならなければならないという極限の状況。
その中で殺人事件が起き、みなは思う「生贄になるべきは犯人だ」。

人の心の闇をのぞき込むような異色の推理小説。

感想の段落にはネタバレも含んでいます。
結末は避けていますが、かなり踏み込んだ内容もありますので、未読の方はご注意ください。

目次

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「方舟」のあらすじ

主人公の柊一は、大学時代の友人たちと山奥の地下建築「方舟」を訪れ、偶然出会った家族3人と共に一夜を過ごすことになる。
しかし翌朝、地震により地下建築の扉は岩で塞がれ、建物から出られなくなる。
さらに水が流入し始め、水没が迫る事態になる。

限られた食料と酸素、そして迫りくる水没。
生き残るためには、ある装置を動かす必要があるが、それを操作した人間は地下に取り残され生存は絶望となる。

そんな中殺人事件が発生する。
犯人の見当がつかない中で皆が思う。
「犯人が犠牲になるべきだ」と。

極限状態の中、人々の本性が露わになる。
互いの過去や秘密が暴かれ、疑心暗鬼と憎悪が渦巻く。

誰が生き残り、誰が犠牲となるのか。

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「方舟」の作者と作品について

夕木春央さんは1993年生まれ、2019年に『絞首商會』(改題後『絞首商会の後継人』)でメフィスト賞を受賞しデビューしました。
『方舟』は彼の3作目で、初の現代ミステリー作品で、多くの賞を受賞した話題作です。

  • 週刊文春ミステリーベスト10 2022 国内部門 第1位
  • MRC大賞2022 第1位
  • 本格ミステリ・ベスト10 2023 国内ランキング 第2位
  • このミステリーがすごい! 2023年版 国内編 第4位
  • ミステリが読みたい! 2023年版 国内篇 第6位
  • ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2022 小説部門 第7位

『方舟』の感想

ミステリーの醍醐味のひとつは結末の意外性ですよね。
その点、この作品は満点だと言ってもいいでしょう。

ただ推理小説としては、あまり推理に積極的ではない登場人物にやきもきすることもありました。

主人公の柊一は、友人たちとの絆を守り、共に生き残る道を探ろうとします。
極限状態ですので、人間関係の崩壊を恐れ、取り繕いながらの捜査はじれったく感じられます。

文章も洗練されているとは言い難く、野暮ったさを感じる箇所もちらほらありました。
ラストまで読み切れば深い満足感が得られたのですが、道中はさほど楽しめませんでした。

そう感じたのは私の読書スタイルの問題でもあるかと思います。

推理小説なので、みなさん真犯人やトリックなんかを考えながら読むと思うのですが、わたしの場合は物語を追うことを優先していて、自分で真実を見抜いてやる、とまでは意気込んでいません。
ページをめくる手を止めたり、時には読み返して手がかりを探すというような読み方はあまりしません。

そのため、推理は作中の探偵に任せる形となり、事件の傍観者と言った立場で読み進めてしまいます。
自身での推理を楽しめる方であれば、手掛かりはフェアに提供されていますので、もっと違った楽しみ方もできる作品だろうと思います。

この作品は読者も探偵役になったほうがより楽しめるのではないかと思いますので、これから読む方にはぜひチャレンジして欲しいです。

他の本格ミステリと毛色が違う感じがしますので、ミステリマニアの方にも新鮮な面白味があるのではないかと思います。

夕木春央さんの『方舟』は、極限状態での人間心理と推理が交錯する異色のミステリーです。
高評価を受けるこの作品をぜひ一度手に取ってみてください。読者自身が探偵となり、物語の謎を解き明かす楽しさを味わってみてはいかがでしょうか。

かつき

記憶に残る作品なのは間違いありません。

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「方舟」を気に入った方におすすめする作品

十戒/夕木春央

父と訪れた孤島で、殺人事件が発生する。
“この島にいる間、殺人犯が誰か知ろうとしてはならない。守られなかった場合、島内の爆弾の起爆装置が作動し、全員の命が失われる”。

かつき

『方舟』の次に書かれた極限状況ミステリー。

そして扉が閉ざされた/岡嶋二人

大富豪の娘が謎の死を遂げ、娘の遊び仲間だった男女4人が、遺族の手で地下シェルターに監禁される。
事故の真相究明のため、4人は脱出を試みながら推理を開始する。

かつき

極限状況下で繰り広げられる、異色ミステリー。

そして誰もいなくなった/アガサ・クリスティー

孤島に集められた10人の男女。
招待主不在の中、童謡の歌詞通りに謎の連続殺人が発生する。
減っていく招待客、そして誰もいなくなる・・・。
巧妙な伏線と衝撃の結末が待ち受けるミステリー作品。
ナレーション: 平川正三

かつき

アガサ・クリスティーの最高傑作のひとつ!

かつき

最後まで読んでいただきましてありがとうございました。

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