オーディブルに潜む『頭に入らない』という問題の根は深く、慣れや集中力で解決しようとするのは無理があります。
解決のためには、①心得、②環境把握、③作品選び、という3つのアプローチから行う必要があります。
具体的には、②聴いている環境の特性を把握し、③その環境に適した作品を選び、①何回も聴き、アウトプットも行う、ということが必要となります。
この記事では、まず最初に頭に入らない理由を説明いたします。そのあとで、①~③のアプローチについて順番に解説いたします。
忙しくて時間が足りない現代人に、『ながら読書』の需要は高まっており、Audible(オーディブル)をはじめとするオーディオブックサービスの注目度は徐々に上がってきています。
「もっと読みたい」「もっと効率的に」。そんな想いを実現するのがオーディブルなのです。
しかし、オーディブルを使い始めてみると、期待外れと感じる方もいるようです。
「聞いてはいるけど、なかなか頭に入らない」「内容を覚えていられない」という声をよく耳にします。聴いても頭に入らなければ、長く続ける気にはならないでしょう。
実は、この「聞いても頭に入らない」という問題には、効果的な対策があります。
この記事では、オーディブルが頭に入らない原因と、その解決法を3つのアプローチでご紹介します。
- オーディブルを利用するときの心得
- オーディブルを聴く環境の特性の把握
- 環境に応じた本の選び方
これらのアプローチを実践することで、オーディブルの効果を高めることができます。
きっと、みなさんのより良いオーディブルライフの参考になります。
オーディブルが頭に入り難い4つの理由
オーディブルが頭に入り難い理由には、主に以下の4つが挙げられます。
- 聴き逃しにより理解度が低下する
- 個人的な慣れや向き不向きがある
- 聴覚以外の情報が少ない
- 一度で頭に入れるのは、そもそも難しい
順番に説明いたします。
1.聴き逃しにより理解度が低下する
オーディブルを聴くとき、『ながら聴き』をするケースが多いでしょう。
『ながら聴き』をできるのがオーディブル最大の特徴ですが、理解するための弱点にもなっています。
移動中、家事、運動をしながらオーディブルを聴く人は多いでしょう。そういった、『ながら聴き』に最適と思われる時間であっても、注意を逸らされる場面は多々あり、そこで聴き逃しが発生します。
自分は聴いているつもりでも、他のことに意識が逸れたことで、情報が脳内で軽視され、記憶から抜け落ちやすくなります。
この注意が逸れる瞬間は、集中して聴いている時にも訪れます。
読書はただ文字を追うのではなく、思考を必要とします。そして、聴いている最中に考え事をすると、聴き逃しが起こります。
紙の本であれば、考えている間は読む速度を落としたり、立ち止まったりするでしょう。特に意識していなくても、そうしているはずです。
しかし、オーディブルは一定のペースで進行します。こちらが理解したかどうかなんてお構いなしです。難しい内容や考えを巡らせたい箇所でも、停止せずに先に進んでしまいます。
考えなければ理解できない、考えれば聴き逃すという状況となり、どちらにしても理解度は下がります。
ながら聴き中はスマーフォンの操作がしにくいです。一時停止も巻き戻しも面倒です。
2.個人的な慣れや向き不向きがある
人には認知特性というものがあり、情報を処理する際の傾向には個人差があります。
視覚・言語・聴覚の3つの特性に分けることが出来ますが、聴覚情報の処理が得意な「聴覚優位者」は全体の1〜2割程度に過ぎないと言われています。
多くの人は、オーディブルが不得意なのです。
また、オーディブルは比較的新しいメディアであり、多くの人にとってまだ慣れていない情報取得方法です。
そのため、慣れ親しんだ紙の本での読書と比較すると、『頭に入りにくい』と感じやすくなります。読書経験が豊富な人ほど、そのギャップは大きくなるでしょう。
紙の本を読む行為と、耳で聴く行為では、脳の使われ方が異なります。
目で文字を追う読書は、意識的に情報を選択し、取捨選択しながら理解していく作業です。一方、オーディオブックは、受け身になりやすく、慣れないうちは取捨選択の処理が追いつかず、情報を上手く取得できていません。
3.聴覚以外の理解を助ける情報が少ない
紙の本では、図表、イラストなどの視覚的要素が理解を助けてくれます。
文字にも多彩な装飾があり、情報を視覚的に理解しやすくするための工夫が盛り込まれています。
特に複雑な説明やデータは、視覚的に捉えることで理解しやすくなります。
視覚情報は理解を深めるために非常に重要です。
オーディブルではこれらの視覚的補助がほとんどありません。
作品によってはPDFで図表が提供されています。ですが、オーディブルは耳を使う媒体ですので、目で見る媒体との相性が良くありません。ながら聴きをしている状況でスマートフォンを操作しての確認しようと思うと、いったんすべての作業を止める必要があります。結果として視覚的な補助なしで理解を進めなければなりません。
さらに、本の匂い、紙の質感、ページをめくる音など、五感を刺激する要素が多い紙媒体と比べ、聴覚だけに頼るオーディブルは、脳への刺激が少なく、記憶への定着を阻害している可能性もあります。
紙の本では、視覚情報と言語情報に加え、多くの刺激があるのに対して、オーディブルでは、ほとんど聴覚情報のみに頼る形になりますので、頭に入りにくくなります。
4.オーディブルでなくとも一度で頭に入れるのは難しい
根本的な問題として、そもそも紙の本であっても、一度読んだくらいでは頭に入りません。
これは、脳が新しい情報を処理し定着させるのに時間がかかるためです。実際には、本人が思っているほど理解もしておらず、記憶にも定着していません。なんとなく身に着けた気になっているだけです。
試しに小説でもビジネス書でもいいので、読んだ1週間後に内容を思い出してみて下さい。漠然としたストーリーや、ところどころのポイントは覚えているでしょうが、最初から最後まできちんと説明するのは無理でしょう。
たぶん、読み終えた直後でも、全部説明しろと言われれば困難でしょう。理解して、覚えておくというのは、とても難しいことなんです。
私は無理でした。細部がほとんど抜け落ちていて、断片的な情報しか伝えられませんでした。
紙の本を読んでいても、内容を完全に理解し記憶するのは容易ではありません。多くの人が、読んだ後すぐに内容を忘れてしまう経験をしているはずです。
『頭に入らない』というのはオーディオブック特有の問題ではないのです。
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解決アプローチ:オーディブルを利用するときの心得
『オーディブルが頭に入らない問題』を解決するためのアプローチとして、まずは心得について解説いたします。
- アウトプットを行う
- 読んだことのある作品を聴く
- 同じ作品を何度も聴く
どれもオーディブルに限らない、新しく得た情報を身に着けるための普遍的な心得ですので、ぜひ覚えてください。
オーディブルは繰り返しの為のツールとして、素晴らしい効果を発揮します。
1.アウトプットで理解を深め、記憶の定着化をする
聴いて終わりはよくありません。
聴いたことを身に着けたければ、アウトプットがなにより重要です。
アウトプットすることで理解が深まり、記憶が定着し、学習効果は飛躍的に向上します。
メモを取る
アウトプットの基本はメモです。
新しく得た情報は想像以上のスピードで忘れていってしまうため、できるだけ早いタイミングでメモを取ることが重要です。
聴きながら、気になった点があったらその都度メモをするというのが理想ですが、ながら聴きではそうもいきません。あらかじめ、聴き終わった後にメモを取る時間を想定しておきましょう。
誰かに説明する
聴いた内容を誰かに説明しましょう。
説明するためには、内容を整理する必要があるため、自分が理解できていなかった点が明確になります。
家族や友人に「今日こんな面白いことを学んだよ」「この小説はここが面白かったよ」と話すだけでも、理解は格段に深まります。
身近に話せる相手が見つからない場合は、SNSで印象に残った部分を投稿したり、日記に感想を書いたりするだけでも効果はあります。
「誰かに話そう」と意識して聴くことで、より能動的に学べるようになるというメリットもあります。
まとめノートを作成する
学んだ内容は、ノートにまとめることをおすすめします。
書き出す作業自体が理解を深め、あとで見返すことで記憶を定着させる効果も期待できます。
ノートは見開き1ページ分程度で十分です。重要なポイントを箇条書きにしたり、図解を交えたりしながら、自分なりの「まとめ」を作りましょう。
後から気づいたことを書き足せるよう、余白を残しておくのもポイントです。
紙のノートがおすすめですが、スマートフォンのアプリなどを利用してもかまいません。自分が使いやすいツールを選びましょう。大切なのは、継続できる方法で学びを記録することです。
ノートは努力が形として目に見えやすいので、モチベーションの維持にも効果的です。
2.理解しやすい、すでに知っている本を聴く
「内容を知っている本」を聴きましょう。
一度読んだことのある小説、すでに知識のある分野のビジネス書などを聴きます。これは、一見遠回りに思えるかもしれませんが、実は非常に効果的な方法です。
「知っている内容だから退屈かも」と思うかもしれませんが、本当に知識を身につけるには、むしろこれくらいが適度な難易度です。
なぜなら、新しい情報が少ければ聴き逃しがデメリットになりにくくなります。また、理解するための認知負荷も低くなるので、聴き逃しが起きにくくもなります。さらに、要点をすでに把握していることで、細部に注意が向きやすくなり、理解や考察が深まります。
3.理解できるまでなんども繰り返し聴く
身に着けたい作品は何度も繰り返し聴きましょう。
記憶を定着させるには、反復が鍵となります。1度では頭に入らないことを前提として、なんども聴いて身に付ければよいのです。
エビングハウスの忘却曲線によると、人は学習した内容を時間とともに忘れていきます。そのため、完全に忘れてしまう前に再度聴くことが効果的です。1回目を聴いた翌日に2回目。1週間後に3回目というように間隔を空けると、記憶の定着率が高まります。
とはいえ、オーディオブックを聴く時間の長さを考えれば、全て聴きなおす復習には無理があります。わたしは、メモやノートによる復習も交えつつ、1ヶ月後にもう一度聴くというペースで復習しています。
オーディブルであれ、紙の本であれ、一回ですべてを理解し、記憶するのは難しいものです。
そのことを理解し、アウトプットを行う、何度も繰り返すという心得を持って挑みましょう。
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解決アプローチ:オーディブルを聴く環境について把握する
オーディブルの効果を最大限に引き出すには、自分のオーディブルを聴く環境の特性を正しく理解することが重要です。
環境を把握するためのポイントは、集中できる度合いと、メモの取りやすさです。
ながらで行う作業の難度や、事故などのリスクへの注意、気が散ってしまう要因の多さなどによって、集中度合いが変わります。
この段落では、いくつかの代表的な環境について、分析していますが、環境による集中度やメモの取りやすさの感じ方には、大きな個人差がありますので、参考程度でお願いします。
たとえば、電車での通勤時間を「集中できる貴重な時間」と感じる人もいれば、「周囲が気になって集中できない」と感じる人もいます。また、ノイズキャンセリングイヤホンの使用や、音声メモアプリの活用など、使用するツールによっても変わってきます。
自分がオーディブルを聴いている環境について、どれだけ集中できているか、メモを取ることが可能かを検討することが重要です。
理想的な環境とは
理想的なのは、自宅のデスクの前や、落ち着いたカフェの席など、オーディブルに集中できる環境です。スマートフォンの通知をオフにし、メモを取るノートも準備。オーディブルに没頭できる状態が理想的です。
しかし、現実的には、そのような理想的な環境で使える時間は限られており、とても貴重です。
効率的なインプットの時間にするのも良いのですが、その時間にしかできないことに使いましょう。
限られた理想的な環境は、ノートのまとめなどのアウトプットの時間として活用することをお勧めします。
一般的な環境の特徴
電車・バスでの移動
- 集中度:○
- メモの取りやすさ:△
- 阻害要因:
- アナウンス
- 他の客の会話
- 乗り換えへの注意
入浴(浴槽内)
- 集中度:◎
- メモの取りやすさ:×
- 阻害要因:
- リラックスしすぎて眠くなる
- 脱水症状など、体調への配慮
ウォーキング
- 集中度:○
- メモの取りやすさ:×
- 阻害要因:
- 道路状況の確認
- 他の歩行者や車輛への注意
ジムでの運動
- 集中度:△
- メモの取りやすさ:△
- 阻害要因:
- 運動の負荷
- 周囲への注意
自動車の運転
- 集中度:△
- メモの取りやすさ:×
- 阻害要因:
- 運転への注意
- 交通情報の確認
- 経路の確認
料理中
- 集中度:△
- メモの取りやすさ:×
- 阻害要因:
- 危険な作業への注意
- 準備や確認作業
掃除中
- 集中度:〇
- メモの取りやすさ:△
- 阻害要因:
- 作業音
- 手順の確認
デスクワーク専用時間
- 集中度:◎
- メモの取りやすさ:◎
- 阻害要因:
- スマホの通知
- デスク上においてある物
環境を把握することは、オーディブルを効果的に活用するための始まりです。
自分がどんな環境でオーディブルを使っているのか、その環境でどの程度集中できるのか、メモは取れるのかを把握しましょう。
完璧な環境でなくても、その特性を理解し、うまく利用することが、効果的で継続的な学習に繋がります。
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解決アプローチ:環境に応じて聴く本を選ぶ
環境の特性を把握したら、あとはその時間に適した本を選ぶだけです。
簡単に表にまとめましたので、参考にしてください。
環境の特徴 | おすすめのジャンル | 理由 |
---|---|---|
メモが取りにくい | ・小説 ・物語 ・エッセイ | ・文脈で記憶を呼び起こして、メモを取りやすい |
メモが取りやすい | ・ビジネス書 ・学習関係の本 ・自己啓発本 | ・すぐにメモを取らなければ、気づきを忘れてしまう |
集中できる | ・難しい内容の本 ・初めての分野の本 ・専門書 | ・聴き逃しを減らさなくては理解できない |
集中できない | ・既読の本 ・知識のある分野の本 ・繰り返し聴く前提の本 | ・くり返しや、既存の知識で聴き逃しを補う |
これは私の間隔ですので、必ずしもこの通りである必要はありません。
理解度が低すぎると聴いても意味がない
特に注意が必要なのは、初めて読む本です。特にしっかり勉強を始めたいときの最初の一冊は、必ず集中できる環境で聴いてください。
難しい内容を、集中せず耳で聴いて理解するのはほぼ不可能で、聴いている時間が無駄になります。理解しないまま繰り返し聞いても効果は出にくいです。
集中できない環境で聴くのであれば、せめて予備知識のある本にしましょう。
学びたい本はメモの取れる環境で聴く
また、学びたくて聴く本については、必ずこまめにメモを取ってください。
こまめにメモを取ることが、読書で効果を得るための最適解です。面倒に感じますが、これだけは避けて通れません。
要点をまとめるというよりは、自分が感じたこと、気づいたこと、共感したことなどをメモするとよいでしょう。
あとでメモしようと考えて先に進んでしまうと、かなりの確率で忘れます。
自分の記憶力を過信しないでください。
小説やエッセイはまとめて振り返ってもよい
メモの取りにくい環境では、小説やエッセイなどの、楽しむために聴く本を選ぶと良いでしょう。
楽しむためとはいえ、内容を深く理解する為にはメモを取ったほうが良いことに変わりはありません。
ですが、重要性は下がりますし、物語がある分、あとから振り返ってメモを取るという作業がやり易いです。
オーディブルは再読に使うのに最適
ながら聴きのメリットを活かすには、これまで読書に使えなかった、集中度が低く、メモも取りにくい環境に使うのがベストでしょう。
効率の悪い環境ではあるのですが、無が有になるのですから、その効果は絶大です。
メモの取り難さも考慮すれば、小説の再読というのが最適です。
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オーディブルを最大限に活用し、学習効果を高めよう
忙しいビジネスパーソンの皆さん、いかがでしたか?本記事では、オーディブルを使って効果的に学ぶための3つのアプローチについてご紹介しました。ここで、重要なポイントを振り返ってみましょう。
- 頭に残すための効果的な聞き方
- 音声学習と読書の違いを理解する
- 反復学習の重要性を認識し、実践する
- アウトプットを通じて学習内容を定着させる
- 集中力を高める環境づくり
- 静かで快適な聴取環境を整える
- ながら聞きの落とし穴を認識し、適切に対処する
- デジタルツールやアナログツールを活用してアウトプットしやすい環境を作る
- ながら聞きに適した本の選び方
- 既読書のリスニングを活用する
- 繰り返し聞くことを前提とした本を選ぶ
- 自分の状況やレベルに合わせてジャンルと難易度を考慮する
これらのアプローチを組み合わせることで、オーディブルでの学習効果を最大化できます。例えば、通勤時に既読のビジネス書を聴き、重要なポイントをスマートフォンにメモする。そして、週末にその内容を振り返り、自分の言葉でまとめてみる。このような習慣づけにより、忙しい日々の中でも着実にスキルアップを図ることができるでしょう。
大切なのは、これらのアプローチを自分のライフスタイルに合わせて少しずつ実践していくことです。一度にすべてを完璧に実行しようとする必要はありません。まずは、最も取り入れやすいものから始めてみましょう。
おーディブルは、忙しい毎日を送るみなさんにとって、時間を有効活用できるとても便利なツールです。この記事で紹介したアプローチを活用し、効率的かつ効果的な読書体験を実現してください。
知識は力です。オーディブルを通じて得た知識が、みなさんの人生の役に立つことを願っています。
最後まで読んでいただきましてありがとうございました。
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